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Novels/小説  頭痛


 

 頭痛
 

 診察室に三人の男が座っていた。やがて医師が現れ、それぞれの病状を聞いた。
 Aは言った。「頭痛がひどくて頭が割れそうです」
 Bは言った。「頭痛がひどくて仕事も手につきません」
 Cも言った。「大したことはないのですが、ときどき頭痛がするのです」
 医師は三人の頭の中をのぞきこみ、箸のようなもので注意深く頭痛の元を取り出した。
 Aの頭の中から出てきたのは大きめのだんご虫のようなものだった。
 Bの頭の中からはイナゴとそっくりの形をした黒い虫が出てきた。
 Cの頭の中から、医師は非常な苦労をして虫を取りだしたが、まるでナマズにサソリの脚をつけたような巨大な虫だった。だんご虫とイナゴのそばにずっしりと重そうなやつが横たえられるとAとBは無言で顔を見合わせ、C は恥ずかしそうにうつむいた。
「あなたのような患者がいるから困るんだ」
 医師はひどい侮辱を受けたように、いらいらとした口調で言った。診察室に気まずい空気が流れ、しまいにCは虫を頭の中に戻してすごすごと帰った。AとBは虫に対してしかるべき処置を施してもらい、すがすがしい気分で帰って行った。





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