台風

 

 夏の朝ベランダで「ごお、ごお」と音がするので見ると、はぐれ台風だった。すっかり縮んで弱っていたので家の中に入れてやった。
「おきまりのルートってやつにふと、いや気がさしたんだ。ああ、かまわないでくれ」
 そんなことを言いながらも、以来ぼくの家のリビングに腰を据え、日がな一日テレビの前でのらくらしている。野球やドラマも見るが、やはり気象ニュースは気になるらしい。次々に列島を駆け抜ける仲間の動向をチェックしては「あいつとは仲がよかったんだ。立派になった」とか「むやみに被害を出してやがる。しろうとだな」などとぶつぶつ言う。
 秋が深まり、台風情報もめったになくなると、台風は淋しそうな顔をするようになった。
 あるとき台風がテレビを見ながら目をうるませているのでふと見ると、画面にはオホーツク海が映っていた。
「あそこに行きたいのかい」
 そういうとぷいっと横を向く。可愛げのないやつだ。でも、最近ますます小さくなった台風があわれで、ぼくはひそかにオホーツク海ツァーのパンフを取り寄せたりしている。

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