雨宿り
何十年も雨が降らない国の石ころだらけの原っぱで、ジェームスがトーマスに言った。
「おい。雨宿りってものを知ってるかい」
「知らないよ。なんだい、それ」
「この本によると、とてもいいものらしい。それはほんのささやかなできごとで、しかも、なんだかとてもほっとするものだそうだ」
そこへ急に雨が降ってきた。ジェームスもトーマスもそれが雨だと知らなかったが、冷たいので思わずあたりを見回した。すると古いパラソルがあったので広げてみた。いい具合に雨をよけられたが、穴が一つ開いている。
「おい、なんだかぽたりぽたりと冷たいよ」
「こっち向けるとおれが冷たいよ」
気まずい空気になったが、パラソルを始終ぐるぐる回していると平等に冷たいことがわかった。パラソルをトーマスが持ってぐるぐる回し、ジェームスが本を読んだ。
「雨宿りを一緒にしているうちに友情が生まれることもある、そうだ」
「ふうん」
「一度雨宿りというものをしてみたいなあ」
「そうだなあ」
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