五郎と十郎
五郎はひどい低血圧で、朝はこの世の終わりかと思うほどだるい。十郎は高血圧で朝からすばらしく元気がいい。
「やあ! 五郎じゃないか! どこへ行くんだい、一緒に行こうよ!」
朝から大声で十郎が話しかけるとそれだけで五郎は殺してやろうかと思うが、長年のつきあいだからそうもできない。だるいのをがまんしてなんとかつきあっているとだんだん昼が近づき、五郎も少し元気が出てくる。十郎のほうは朝ほど元気でなくなる。それで昼ご飯を一緒に食べるころは話もほどよくはずみ、楽しくてしようがない。
「おれは本当におまえが好きだ」
「おれもおまえが友達でよかった」
二人は変わらぬ友情を確かめあう。
だが、十郎は夜が近づくとどんどん元気がなくなる。なんだかゆううつでたまらなくなる。一方五郎は夕方あたりからますます元気になる。これからいろんなことができそうな気がする。
「おい、十郎、これからどこへ行こう!」
「・・・おれはもう布団に入って眠りたい」
「何言ってんだ、元気を出せよ!」
十郎はほとんど五郎を恨んでしまう。ぶっ殺してやろうかと思うくらいだ。でも、そうもできない。長いつきあいなんだから。
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